桜雪、散る

ギターケースは、小銭でいっぱいになった。


ギターを閉まって、彼女は満足そうに「肉まんおごってあげようか」と言った。


ふにおちない僕は、いらない、と首をふる。


彼女はくすっと笑って歩きだした。


「あたし、まもりっていうの。あなたは?」


まもり。


2日目にして知った名前は、意外と普通だった。


僕は携帯を取りだし、メモ画面に『渡部陽太郎』と打つ。


「ふうん」


聞いといてあんまり興味なさそう。


僕と初めて会う人は、なんでしゃべらないんだとか、

どうしてしゃべれなくなったんだかとか、


大抵聞いてくる。


でもまもりはそんなことないから一緒にいて心が楽だ。