それからさらに月日が経ち、エリザベスは30歳となる──めきめきと頭角を現し、副社長にまで上り詰めた。

 社長である彼女の父も、ここまで早く成長するとは思っていなかっただろう。

 娘の成長に喜ぶ反面、異性と付き合おうとしない彼女にその表情を曇らせる。

 父は彼女の心の中に同じ男性が居座っている事を知っている……しかしそれをどうする事も出来ない。

 時折、何かを見て涙を流している彼女に気づいてもかけてやれる言葉が無い。

 それが歯がゆかった。