「レディ、怪我は?」

 1人の老齢なガードが彼女に近寄り少し心配そうな面持ちで問いかける。

「無いわ」

「奴が偽物だとよく解りましたね」

「だって、これで何人目? ベリルの名で私を誘拐しようとした人」

 老齢のガード、ピエールに苦笑いを見せる。

 ブラウンの髪と目、ガッシリとした体格だがすでに50代に近づいていた。

 裏の世界で多少名の通った人間なら、ベリルの事を少しくらい知っていてもおかしくはない──大会社に身代金を要求するとき下調べは入念に──その際に彼女がベリルにガードされていた時の事も浮かんでくる。