「気のせいに決まってるでしょ?何に悲しみを感じなきゃいけないのかがわかんない。」
あっさり答えたら、沈黙が続いた。
「もういい?あたしはあんたと違って暇じゃないの。」
それは嘘だったけどね。
「うん。少しでも話せて満足したから。」
「あ、そう。」
もうさっさと帰ろう。
そう思った時、彼は言った。
「金沢さん、下の名前はなんていうの?」
「あんたに教える名前なんてないし、義務もない。」
そう言い捨てて帰った。