いばら姫






全員が全員、
携帯を握りながら
ザクザクと歩いて行く、ミニとタイツ

マウンテンパーカーや、レザージャケット


ハの字に広がる視界には
スクランブル交差点





――― 頭をあげると


駅前ビルの壁面
巨大な広告看板には

埠頭の工場 燃えるガスの下
モノクロームの"CheaーRuu"の姿と
アルバムタイトル
" Grain-Growth " の白抜き文字



左から

青山は、モッズコートに
ブーツカットジーンズ

灰谷は モダンミリタリーに
タイトストレートのボトム

緑川はレザーのライダースで
スリムストレート

赤池はダッフルコートを着ていて ―――




「 ど〜ぞ〜! 」

フィットネスクラブの
赤いコートを着たオネエチャンが
全開の作り笑顔と、甲高い声で
以前と比べて、だいぶ薄くなった
広告入りポケットティッシュを
手渡して来る


「 ありがとう 」



チラシだけの配布員達は
ことごとく、通行人に無視され続け


そんな中に一人、私服のまま
髪を上にあげ、眼鏡をかけて
あまり街に慣れていない感じの女の人が

手帳を握り締めながら
なんとか誰かに声を掛けようと
必死にウロウロしていた



宝くじ売り場の前

街路樹を囲む円の形した、ベンチに座り
会社から持って来たコーヒーを
ポケットから出した


年は多分、
俺とそんなに変わりはないけど
化粧っけが無く、
コートも高校生が着そうな、
ノーブルな紺

脇には何かが挟まれた、クリアファイル



毎回、派手な女グループに
声をかけては、無視されて

――― とうとう軽く、
キレられてしまっていた



謝った拍子に、カップルにぶつかり
男が怒声をあげて去って行くし
クリアファイルの中身も落として
かなり可哀相な事になっている