いばら姫





「 役者は…街の雑踏が少しと

ただこんな設定でって感じで
まだハッキリとは固まって無くて 」


「 おけおけ

で、応募するのは、
例のショートフィルムコンテスト? 」


「 はい ―― そのつもりです 」



「 ショート作品のが、
実は難しいんだけどね

プロモーション映像、
マンガやアニメなんかもそうだけど


池上海平の最大の強み、武器はそこ

" 無駄の無い、緩急あわせたリズム
そこに散りばめられる、センスあるオカズ "

映像の流れ、カット割りで
一緒に、刻んでるんだよな 」



「 ――… リズム 」


「 じゃあ、例題を出そう

モノはあの、ジョンが大切に持ってる
" 天使の微笑 "のポートレイト 」


「 はい 」


「 そこから、左の男を抜いてごらん 」



「 ――… 抜く? 」


「 うん

加工してって意味じゃなくて 」



あまり考えずに
その答えは判った


「 ――― 笑ってません 」


「 お、 うん

あの写真は、当時素人だったってのが
ちょっと不思議な位、構図とか
色合いとか、いい感じだけど

最大の魅力は、あの笑顔であって
背景抜いちまっても、
成立しちゃうんだよな


シーツのシワが羽根に見えるのは
メイクみたいなもんでさ


逆に、
あの舞台設定と、『Azurite』だけ残して
男を加工で抜いた場合

" ああ この子は、誰を見て
こんな笑顔してるんだろう
気になるなあ "

見えない存在を、
気にさせる事すら出来る


ただ、
最初から、この男が居なかったら、
『Azurite』は、こんな表情で笑わない 」



「 はい 」