いばら姫






「 ―― アズの、涙だろ 」





そう言った途端
水谷は一気に悪党顔をして
肩を落とし、大きな溜め息をつく



「 ―な、何よ そうだろ?! 」


「 ………ほんっとうに賢くないなあ!!
さっきの進化云々撤回!

―― 泣くなら泣けばいいんだ!

も…
そんな焼き菓子とエロで詰まった脳
その辺の河エビ辺りに頼んで
丹念に掃除して貰って来いよ!! 」


「 っ…何でいきなりエビなんだよ!!
じゃあ何なんだ!!!  」



「 あの… 」



怖ず怖ずと現れたアズの手には
トレーに乗った、二つのコーヒー
俺と水谷は、言い合いをやめた



「 …エビの詳しい生態なら
向こうの通りに、ショップあるよ
聞いてくる…? 」


「 あ、いや…
エビの事じゃなく… 」


「 あ 」



水谷は笑いながら
階段の上へと駆け上がり
水色の空と、白い石段の境に消える

後に残るのは
芝生と木々とビル、人々の流れ

上がって辺りを見回しても
その姿は、何処にも無かった