いばら姫





「 さっきの話だけどさ
―― ユカちゃんバンドの事

今は、
彼女達に、ミュージシャンとして
何万もの人間を魅了する姿を
俺は少しも見出だせないけど


…キミを見ていると
用意された運命も、変わるのかなあって
少し思って来たよ



――― だって

ただの悪質ストーカーと
たいして変わらなかったキミが、
…ルウのキモチを考える迄になって
俺のあらゆるちょっかいをかい潜り
映像の仕事まで辿り着けた



人はそれを
『 可能性 』と呼ぶんだろうけど



―― これは凄い『 進化 』だよ?!

人間の心なんて、有史以来
同じ事の繰り返しなんだからさ


延々と戦をし、延々と恋に悩み
歌だって演劇だって
結局どれを見ても、
バリエーションが変わっただけの、
同じ様な恋の唄 ―― 」



「 … 悪質ストーカーって何よ…

それに、そんな醒めた見方してて
俺も多少、そういう所あるけど…

映画とか見るの、
あまり楽しくないんじゃないのか? 」


「 ―― マンションで
初めて会った時、話したけど

映画は付き合いとか
人並み程度にしか見てないよ


… だって
リアルで人が、あがいてるの見てる方が
よっぽど面白いし、笑えるじゃない 」



―― 水谷は

アルカイック・スマイルに通じる
薄く笑った表情で
階段の上から、俺を見つめる


それは
見下ろしながらも熱のある
ステージ上からの灰谷の眼とは、
似て非なるもの ――



「 … でも ひとつだけ

  見たくないものがある 」