美術館からの下り階段
下を向いていたアズが
隣合わせの水谷に向かって、声をあげる
「 ―― でも!
お…私、一生懸命歌った!!
バンドの皆だって
…そんな形で集まりはしたけど
凄くいい人達だよ
一緒にやって、
タカオだって判ってるだろ?! 」
「 そりゃあ…奴らは
欲に塗れた親を見て育ってるもの
" ああなっちゃいけない "って
人柄も兼ね備えた
次代のソーシャライツだし
―― それにね
ルウがいい加減に歌った訳じゃないのは
きちんと判ってる
でも、夏の日比谷野音の時みたいな
色気が全然足らないよね
こっちがキスを送っても
返してくれない感じ?
―― ルウ、青山とは
キスだけで簡単に堕ちるくせに 」
「 …っ な、何、―― いつ見! 」
「 あらっ
カマかけただけなのに
…その反応だと、結構最近? 」
アズは絶句し、一気に顔を赤くして
バッと階段を駆け降り
道沿いのオープンカフェに
バタバタ駆け出して行った
「 ―― ほんっと、
ルウ弄ると楽しい!! 」
水谷は本気で嬉しそうに、
目をキラキラ輝かせて
両手を胸の前で握る
「 … 可哀相だろ 今のは 」
「 あ、岡田クンは、
もっともっとへこみなって
君は技巧には長けてるけど
スポーツや試合じゃあるまいし…
女の子は、
気持ちと体がひとつなんだから 」
「 ―― 俺にカマかけても意味ナシ 」
「 カマじゃないよ
… クリスマスの渋谷で、
アズを堕とそうと必死だったくせに? 」
「 ――― っ !! 」
水谷は声をあげて笑い
手摺りに手を添え、
降りて来た階段を、また昇って行く
そして途中で一度止まり、振り返った
「 そうだ、岡田クン 」
「 ――… 何よ 」


