いばら姫





しばらく、
ただ無言で絵を見ていたアズの瞳は
何処か遠く ―――



深く息を吐いて、誰に言うとも無く
「 ありがとう 」と呟いた


売店でアズは水谷に
一冊、画集を買ってやり

美術館と広場に至る
白い階段の途中に座って
『目が悪くなるぞ』の言葉も聞かず
膝の上に乗せて めくり出す





少し離れた位置に座った
水谷と俺はなんとなく

街を歩く人の、
服の話で盛り上がり始めて
セーターの色から、
ユカちゃんの話に飛んだ



「 …結局、間に合いそうなのかよ 」


「 ビミョーかな?
…久々に、あそこまで不器用な子見た

…でも、俺が編んでも意味ないし 」


「 そうだよなあ… 」


「 それより心配なのは
あの子、東京出て行きたいって
言ってるんだよねえ… 」



「 ―― な、駄目だろそれは 」

「 だろ?!
あー、やっと意見合う奴がいたよ

…青山とルウには、
少し相談したみたいなんだけど
―― やっぱりさ


あの子
ピンチを助けて貰って、
しかも、灰谷じゃない?
でもそれをキッカケにして
青山に会ったり、真木に会ったり

俺に、ついて来ちゃうしさ

それに、自覚は無いかもしれないけど
…あの子、お前の事
相当気にしてるぞ?

…メイコさんですら、
スケートリンクでの岡田に、ときめいて
かっこよかったって絶賛してた 」


… アズの方をチラリと振り向き
距離があるのを確認する



「 スケートリンクの上で
滑れなさそうな子見つけて
カッコヨク助けに行くのは定番だしよ…

…でも、何故かアズ本人の前で
そういうチャンスがない… 」



水谷は吹き出し、軽く腹を抱える