いばら姫





『 …してない 今夜帰るし』


灰谷はそっぽを向いて
アズと目を合わせない


それでもジッと
見つめ続けられているうちに
『 … 判ったよ 』と
姉に叱られた弟みたいな顔をして
アッサリ折れた


灰谷の頭を、アズが笑いながら撫でて

――― 少し泣きそうな、切ない表情で

携帯を持ったまま
少し距離を置いた木の下まで
ゴツゴツと音を立て、歩いて行く




―― いつの間にかスノーマンの周りには
沢山の人だかり

アズはそれをキッカケに輪を離れて
膝を抱え、傍のベンチに座った





「 ―― アズ 」


「 はい 」


前に立ったまま、俺が声を掛けると
マフラーを少しずらして、上を向いた


光に照らされると
アズの碧い瞳は、薄い紅に見えて
あのコンテストの夜を、思い出す




「 お前、」


「 ― ? うん 」



「 …俺と灰谷が、気付く事

―― ユカちゃんが話す事

あの子もテンパると
口数やたら多くなるから

… そういうのも全部判ってて

青山クイズ、出して来たんだろ 」


「 ……クイズ? 」




  アズは本当に
何の事か判らない表情で、
俺の顔を見るから



" ――水谷に脅かされてたんだろ? "


そう言おうとした言葉が口の中で止まる




「 お前

何処か行ったり…しないよな…? 」


肩を掴んで告げた言葉にキョトンとして


――― 次には、俺の大好きな
柔らかい表情で笑う



「 … うん 行かないよ


     ―― だって 」





その言葉と共に、

一瞬で変わった表情と強い視線は
俺の顔から外れ 肩越し


振り向いた俺の視界には




――― 被り物をした者が立っていた