いばら姫





「 あ!! ねえねえ淳!
ニンジン買って来るから、
良ければ少し、代わって下さい!」


「 今晩、カレーか? 」


「 ちがーう この子の鼻! 」


「 判ってるって 」


『 …アズ、俺 買って来る 』


「 あ トオヤいいよ! 私 自分で 」


『 … 青山さん 』


「  ん? 」


『 …あっちで、誰か呼んでる 』



灰谷の視線の先には
ショッピングカートを脇に置いた
ベンチに座る、ショールの老人

皺くちゃの顔で微笑みながら
青山に、手を振っている



「 ―― パン屋のお婆さんだ

ちょっと行って来る
あずる、二人の傍に居ろよ 」


「 うん 」



青山が小走りして行った先には
カートの口を拡げながら
荷物をベンチに拡げる、小さな背中

青山はその手から何かを受け取り、
笑いながら、それをこちらに見せて来る



「 ニンジンか 」



アズは「 ありがとうー! 」と
手を振りながら挨拶し

青山は横に座って、
お婆さんの話を聞いている



―― アズは手を止め

その光景に、何か想い出でもあるのか
覗いた碧い瞳を、柔らかく緩める


『 …青山さんってさ
子供、熟女、手フェチ、ゲイの人に
凄く人気あるよね 』


突然の灰谷の言葉に、俺は咳き込んで
アズも「雑誌で見た」と
鼻水の出て来た子供の鼻を
ポケットからティッシュを出して
拭いている


「 灰谷だって、
何か彼氏にしたいランキング
入ってたろ?
同年代の女に人気高いし 」


『 …掲示板のは、少し違った 』


「 見たのかよ 」


『 …ユカ情報

友達の家に居て、
その友達が爆笑し始めて覗いてみたら
俺、M女性人気、一位だったらしい… 』



俺は爆笑し、アズはびっくりした顔で
「 えーっ?!
トオヤ優しいのに! 」と叫んだ


『 …アズにだけね 』



「 ―― トオヤ

ユカちゃんに、電話した? 」