いばら姫






「 ――― うわっ…?!!! 」



飛び上がり
方向転換した理由は

…… ソファに横たわるアズが
裸婦像宜しく、何も着ていなかったから



バクバクする心臓を抑え
なるべく、アズから視線を外しながら
部屋の様子を伺う ―――


それほど広く無い部屋の中を

燭台のキャンドルが陰影を付け
半円に、明るく照らし

空気も暖かくて、
床に敷かれた絨毯は紅く、足音を吸い込む


壁にはいくつもの風景画が飾られていて
それは何処か、RELIEFの景色に似ていた



アズの前のテーブルには
シャンパングラスと
苺で埋められたホールケーキ

少し不格好な、魚の形のパイと
真っ赤なトマト煮の、野菜のスープ


ゴムの味がするのは確実そうな
トカゲの形のグミやら
原色系の菓子が犇めいている



子供部屋 ――――



―― 多分、アズが嫌な物は何も無い空間





それでも、何かされていないか心配で
傍へとゆっくり近付き、ひざまずく


濃い緑色のクッションに
柔らかい琥珀色の髪を拡げ
軽い寝息をたてている体は


――― 絵描きがもし、この場にいたら

黙ってキャンバスや
スケッチブックを拡げそうな


柔らかい線の 雪の白と 甘い桜色 ―――






… 暫く見とれてハッとなり

慌てて
上着をかけてやろうかと思ったけど
自分が ずぶ濡れなのに気が付いた



―― まず起こして、


…… いや、目が覚めて
… 俺の顔を見たら、何て思うだろう

何も着ていない事に大騒ぎするかな


… それは無いか
去年のクリスマスにも、その前にも
こいつ平気で、颯爽と脱いでたし…





――― その時

頭上で、誰かの駆け回る音がして
扉を閉め、冷たい階段を駆け昇った