いばら姫




何故 ―――

―― アズは寒くない状態でいるのか

そもそも一緒に居るのか


電話の充電をしなくちゃ


小松原さんは着いたかな


青山の様子はどうなのか ――


思考が 地下鉄の轟音の中で
行き先も無く、グルグル回る


… スリータワーの出来事が起こったのは
まだ俺らが、もの心付かない時で
だから正直、よく知らない


本当に哀しい事は、時が経つまで
映画や小説には、あまりならないし
社会の教科書に一行載っていただけ


もしこの街で、
当時の様子を知っている人が居ても
突然、見ず知らずの俺に、
語ってくれる事はないだろう

しかも、隣にあったビルの中の店が
何処に行ったかなんて ――


… 図書館かネット

昼間昇った、ステイトビルの近くに
インターネットカフェがあったのを
思い出した


あそこなら、当時の事を調べながら
携帯の充電も出来るかもしれないし
近くにBest何とかって、
家電量販店があった気がする



―― 途中、電車が激しく揺れて
考え事をしながら、
足に意識が届かなくなっていてよろけた

両隣で支えてくれた乗客に御礼を言う


何だか酷く心配してくれて
" 何処から来たんだ? "とか
しきりに聞かれる


… もしかしなくても、目の前にある
背中や胸に囲まれながら
かなり年下、
と言うか子供と思われている事に気付いて

軽くショックを受けながら
足早に、電車を降りた…