おばあさんの所で
少しゆっくりしすぎた――
早足で
夕べ歩いた道を進んでいたけど
病院の脇道には行かず
もう一本先の道で、新原は曲がった
「裏から入るよ 」
ライヴハウスの裏口には、鉄柵
重いそれを開くと
ほんの少し見える土の地面と
随分古い、非常階段
その横に入口があって
集団ポストが設置されている
事務所だけではなく、
個人の名前もあって
人が住んでいるのかと驚いた
薄暗いその前を通ると
地下への階段
またすぐに昇りの階段があって
『事務所』と書かれた部屋
その前を通り、また降ると
ちょうどPA
音を調節する部所と
その横にある、
『STAFF ONLY』と書かれた
扉の前に出た
長机の上には
白いプリントされた、紙の束
テレビモニターがあるだけの
ガランとした室内
灰皿の前で
松田さんがパイプ椅子に座って
タバコを吸っていた
新原は挨拶をし
松田さんも
「今日は楽しみましょう」と
腕時計を見ながら
少し寝癖のついた髪で、俺達の横を通り
音を鳴らして、階段を降りて行く
「……空気、違うな」
「本番だから
午前中はリハーサル
昼過ぎから、遅れてた機材の搬入と
夕方から一般のお客さん入れで
本番が始まるよ
……あ 」
「 何よ 」
机の上から取った予定表を見て
新原の動きが止まった
「……"CheaーRuu" リハーサル
一番最初なんだな
トリだから…」
俺の体は反射的に
踵を返して、扉に向かったが
――― その腕を新原が掴んだ
「…何もしやしない」
「そんな顔しててか」
新原の顔は笑っていなくて
俺も自分の息が
粗くなっているのに気が付いた
「信用して岡田を連れて来たんだ
それだけは覚えておいて」
「…わかってる 」
「俺も面拝みたいから
一緒に行こうぜ」
新原らしからぬ言い方が
少しおかしい


