いばら姫





地下駅から上がると
ビルの隙間から、
エンパイアステイトビルの高い頭

五番街を北へ―――


そして、二つの尖塔
観光客が、
バシバシ写真を撮りまくっているのは
荘厳を絵に描いたゴシック様式
巨大な大聖堂

街の光とは別に
そのフラッシュで、その白い姿が浮き立つ


道の標識や看板には"Times Square"
"Mid Town"の文字

通り一画に人垣が出来ている理由は
バスドラやスネアを腹に抱え
脇からハイハット、
背中からシンバルを出した
ストリートパフォーマンスのせいだ


道沿いに立ち並ぶ高級ショップ
ショーウインドーの前にも
人、人、人――


日本人観光客の群れに紛れて
パンフレット、地図を開いた

小松原さんに
待ち合わせ場所として指定されたGEビル

地図上では、かなり近い


10分位歩いて
ビルの密集した中心地にたどり着く

遠近法を忠実に守っているビル達は
定規一本あれば"こんな建物だよ"と
人に説明しながら描けそうな白



――― 歓声と

かなり胸をくすぐる、冷えた匂い


ビルのたもとには、スケート場があった


世界中のカラフルな国旗を頭に
長いポールが立てられていて
その下には、
金色の体を斜めにして
手に何か固まりを頂く少年の像


「 ―― プロメテウスよ
人類に火を与えた神 」



髪を下ろし、サングラス
黒い毛皮に身を包んだシルエットは
やはりこの街でも目立つ――


「 小松原さん… 」


だけど、パーティーグッズの覗く
胸に抱えた巨大な紙袋が、少しミスマッチ

そして腕には、サークルの付いた
アルミの杖を持っている


「 …ケガしたんですか? 」


「―― 職業病みたいなもんよ

座長やってるから
そうそう休めないし…
でもこの間千秋楽でね
暫くは休むわ 」


" もういい加減、年だしね "と
小声で言って
俺が少し笑うと、
" そんな事無いですよ って
言う所よ此処は "と口をヘの字に曲げた



「 …あの娘、いい子ね 」


「 え? 」