いばら姫



俺が住んでた社宅団地も
昔は子供が居て
"親の地位で子供同士の力関係が決まる"

そんな事もあったみたいだけど

俺達の時は、子供も少なくて
そんな事したら
した奴が孤立してたしね

『部長さんの息子さんとは
僕ら、もったいなくて
遊べませ〜ん』みたいな…

いつ独りになるか、判らない

だから皆すごく、仲が良かったよ


ネットなんかは、その延長。

――― いつ行っても誰か居る

自分は独りじゃ無い


俺も怪我した途端
あれだけ群がってた連中が
お決まりに手の平返したし

…そんな中で、あずと出会って



きっとあのポスターを見た子達は
心の何処かに『廃墟』があって
ずっとそこに、…独りなんだ



だけど、『Azurite』が立ってる―――

仲間を見つけたみたいな
自分以外にも人がいる…

夢へと誘ってくれる人がいる

そんな気分になったのかもしれない…」



「…カルトかよ 」


「"一等大切な人が居る"

それが生まれた時点で
恋愛も、誰かのファンになる事も
皆カルトでしょ

『ジーザスクライスト・スーパースター』
なんて映画の題名もあるし」



「…なんかむつかしい話してるねえ
朝からそんな話してると
疲れちゃわないかい?」


おばあさんが小皿に
ウサギ林檎を出してくれた


俺は黙々と食べていたけど
新原は話していて
ほとんど手をつけていない事に気付いて
急いで箸を進め出す


おばあさんも林檎のカケラを
一つ口にして、呟いた


「…女を一生、
可愛い女にしときたいなら
男が強くならんとね…

なかなかむつかしいけど
…一等大切にするって事は
大変な事さ…」


「…じゃあ おばあさんの旦那さんは
とてもいい男だったんですね」


「……!! やだよ この子は!」

「いえ ホントに。」


おばあさんは真っ赤になって
手をばたつかせている


新原は

「……うわ 口説くの上手すぎる」と
目を見開いてたけど

俺は煙草に火をつけて
笑っただけだった