「……むかぁし、おばちゃん、
住んでた事あるからねえ
まだ阿尾森駅の床が
木造で…
電車に全部、ストーブついてたっけ」
「…ストーブ電車は、まだありますよ
駅が木造の頃は、記念館の写真で
見ただけですが」
おばあさんは俺の顔を見て
柔らかく笑う
新原が、興味津々で
「…俺、ずっと思ってたんだけど
ストーブとか電車にあって
危なくないの? 」
「…こっちみたいに
ラッシュやら無いし
あんなに早く走らない」
「あー そういう事かあ…」
「…いまだに俺の家の方
バスなんかは、一時間に一本だし」
「……どんな山奥だ それ」
「失礼だな。
…コンビニ近くにあるし
阿尾森の中心には及ばないけど
付近では結構、開けてるすけ」
「はい。失礼しました」
新原は笑いながら
俺に頭を下げる
「…新原はどこよ 」
「俺はずっと
池袋の社宅団地だった
子供が減って、都内の小学校が
かなり廃校になってさ
新宿の学校まで、毎日電車だったよ」
「……私立? 」
「公立だよ 都立
ああ… なんかね
『Azurite』があれだけ
購買欲のバラけた、低い
若年層に受けているのは
"今の若者は、
廃墟を見て育って来てるからだ"
って
そんな記事を見た事があるよ」
「…廃墟 ? 」
「うん 知らない?
原宿なんかで、
ポスターが凄かったんだけど
廃墟にね
白いワンピースで
頭に荊の冠を被ったあずが
立ってるんだ
……独りでね
同じ剥き出しの鉄筋コンクリートでも
建てられて行く、
今から出来て行く物と
…人が居なくなって、荒廃して、
廃れて剥き出しになっている物とは
違うじゃない
――俺達の親、それ以前の世代は
前者を見て育って来た
俺達の世代以降は後者…
前は俺
何でかなあなんて思ってたけど
自分がニートしてから
彼等の気持ち、解るんだよ
―― だって 夢が無いんだもの


