いばら姫




ユカちゃんは軽く飛び上がり
「 …うん 」と小さく返事をする


『…家に、こっち来るって
ちゃんと言って来たのか 』



―― するとユカちゃんは
下を向いてしまって

"…シノんちに
泊まるって言って来た…"と
ゴニョゴニョ言い
灰谷もそれを予想していたかの様に
ユカちゃんのコートを掴み、
リュックを背負って


『 …帰るよ 親に心配かけるな』と
入口に向かって歩いた



―― 俺にしてみれば
かなり真っ当な台詞を吐く灰谷に驚き

この状況で
死ぬ程アズが心配な筈なのに

… ユカちゃんの事も
かなり大切にしている事が
これでハッキリ判った



だからこそ水谷はユカちゃんを

灰谷がこういう選択をするのを知って居て
…こちらの手数を減らす為に
こうしてここまで連れて来たのか ――



けれどユカちゃんは
ギュッときつく、目をつぶり
ダダッと駆け出すと、
灰谷の居た部屋に入って
ガチャリと鍵を掛けてしまった


『 …… ユカ!!! 』




灰谷はドアを叩き
ユカちゃんは泣きながら
"どれだけ心配したか"と抗議して


真木は溜息をつきながら
「…さすがに今回は
何も言わずにニューヨーク、
遥かマンハッタンまで
連れて来ましたとは言えねえよなあ…」
と頭を抱えた



「 前にもあったのか? 」


「… 夏、オマエがいきなり
アズに会いに来た時あったろ
あの時、ユカもいきなり新宿に来て
それで休暇に一緒させた


その前も、コンテストの時か

灰谷がアズに憧れてるのを知って
どうにか会わせようとしたらしくてな
それで終電に間に合わなくなってさ

結局青山が
千葉まで往復する事になった

かなりのGoing系だよ
―― 何か岡田に似てるよな 」


「 ………… 」



真木にニヤリと笑われて
…反論出来ない自分が悔しい



「―… ダメだな 出ねえや 」


「… ? 」


「 青山も…アズルも
さっきから鳴らしてるけど出ない 」


掻き上げた茶髪の耳に
携帯のイヤホン