いばら姫





部屋に入ると

ユカちゃんが灰谷の部屋の前で
不安そうに突っ立っている



「 ユカあ どうした? 」

真木が明るく声を掛けると
ユカちゃんは関を切った様に
どーっと涙を流した


「 … わっ 私
また…やっちゃった… 」


「―― 何を 」


「 しっ 心配で…
打撲だけだって…心配ないって
ちゃんと連絡くれてたのに…

会いたいだけで…
しっ… 名前とっ
テレビとかでしか知らない人に
ひょいひょい…着いて来て… 」


「―― …まあ、怒るわな 普通は 」


真木はソファに反り返り
片眉をあげて笑いながら
煙草に火を着ける


俺は素直な気持ちで
ユカちゃんを声をかけた


「――ユカちゃん
灰谷は、ちゃんと嬉しいと思うよ 」


ユカちゃんは涙を拭いながら
俺の顔をジッと見る

傍に寄って、
少し雪で濡れたコートのボタンを外し
ソファに置くと
真木がタオルをこちらに渡した



「 …ただ、いきなりだったしさ
やっぱり心配したのもあるだろうし

…でもそれは好きだからで… 」


「…彼に好きなんて…
私、一回も言われてないです… !」

髪を拭く俺を睨み
顔をくしゃくしゃにさせて
ユカちゃんは怒った


「でも、灰谷に
セーター編んでくれって
言われたんだろ? 」


「…… はぃ 」


「― 男は 好きでも無い奴の編んだ
念が入ってそうな物なんて
絶対着ないからさ…
―― 安心していいよ 」



その言葉で
ユカちゃんの表情は緩み
涙が少し引いて行く

その手にタオルを持たせて
ソファの方へと背中を押した



真木が脚を組んだまま
顎を上下させて頷き
俺に見える様にだけして
小さく両手で拍手する



「 なあ ユカ
…オマエ、昨日は何してたんだ? 」