いばら姫




俺の乗ったエレベーターが
リンと音を立てて閉じようとした時
体を捩込んで入って来た真木が
荒い息で咳込みながら睨む



「……何でユカがここに来たのか
アズル達が何故消えたのか
判る範囲で、全て説明しろ」



「…―― 灰谷の事を心配して
事務所前に居た所を、声掛けて…
水谷が一緒に連れて来たと言ってた… 」


「……ガキ共は関係ないだろう…!!」






ホテルのフロント前
待ち合わせのバー等があるエントランス
その真ん中に突っ立って

紺のダッフルコートに、白いマフラー
肩には大きなオレンジのリュック

リスみたいにキョロキョロしながら
天井に描かれた壁画に目を奪われ

ポカンと口を開いたユカちゃんが居る




―― 真木はツカツカと歩き寄り後ろから
ユカちゃんの膝の裏を軽く蹴り

ガクンとなった彼女は、
かなりデカい声で叫んで
周囲からの目が集まると
真っ赤な顔をして縮こまった



真木はフロントに声を掛け
リュックを持ってやってから
一緒にこちらへと歩いて来る


遅れてやって来たジョン
その横の灰谷
耳元に寄り、
リュックを押し付けながら
小声で呟いた


「… 遠矢 ユカを部屋から出すな
オマエが付いてろ 」





―― 灰谷の
渇いた眼差しは女の子へ

意中の彼に会えた喜びで
明るくしていたその表情が
その眼を見た途端に、一気に曇った


俺は笑いながら
ユカちゃんに声をかける


「―― 駆け落ちにでも来たみたいだな 」


「なっ……!!何ですかそれ!!
アズさんにもからかわれて…!」



「… そう言えばアズ、何処かな

フロントまで迎えに出た筈なんだけど 」


「えっ あっ はい!!…あれ?
―― さっきまで
ハルトさんも一緒に居て… 」


バーの方に捜しに行こうとする
彼女を引き止め、灰谷に渡し
回転ドアから外に向かった