いばら姫





麺を口に、
碗と箸を持ったまま
真木はアズから逃げる

結局 短距離で捕獲され
それでも碗を譲らずにいると
オープン席で麻雀をしていた客と店員が
愉快そうにドッと笑った







「 …… あずる!! 」




「――… リュウジだ!!!」





日本では
かなり高い部類の二人の体は
この街では、人波に紛れ

ジョンに借りた赤いダウンが
ゆっくり両腕を拡げると
飛び付いて来た、深緑のコートを
笑いながら抱き上げる




――― 夏に比べて

かなり長くなった琥珀色の髪が
青山の肩先へ柔らかく流れ
長い指がその頭をぐしゃぐしゃにして

けらけら笑いながら
思い切りアズが廻した両腕は
赤いダウンの内側の腰

青山は、
胸に埋められた白い頬を両手の平で持ち
碧い瞳を覗き込みながら
何かゆっくり、話しかけている




――― 顔の見えない
あのポートレートでも
こんな表情を
していたんじゃないか ―――


そんな事を思わせる
足りないものが一瞬にして埋まった顔


ジョンはそれを
何か尊いモノでも見ている様に見詰め

俺は何となく、突っ立ったままだった


…そう
考え込んでいた残りの一連は
アズには全く関係無い事なんだ
こうやって今、無事に――




―― 背中をバシンと叩かれる



店から出て来た真木が
爪楊枝をくわえながら、横に居た



「 あれがアイツらの
普通モードなんだよ

――… へこんでる場合じゃねえぞ 」


そう言いながら、もう一度俺を叩いて

二人の横に小走りし
中華レストランのビルを指射し

アズの顔を
後方に居る、俺やジョンの方へと促した