いばら姫








金網の扉から出ると
ジョンは携帯で会話を始め
何事も無かったかの様に
南京錠を元に戻す


連絡を受け、近くを走っていた
"本物のサモハン"がやって来て
ジョンさんは「88」と呟き
真木を抱えた青山が後部座席に乗り込んだ



幾分暗くなって来た空の下

ブロードウェイを通過して
窓の外に長い橋と、
大小のバスが密集する景色が流れて行った


――― 碁盤の目の様な
整然とした町並みは消えて

赤や黄色
漢字の看板が、雑然と道の通りに現れる

凄い密集度で歩く人の波は黒く
テレビで見た事のある日本の中華街へ
一気にワープして来たのかと錯覚する位だ




「 ココからは車入れナイから
歩いて行くヨ
アオヤマ、大丈夫? 」


「 ――― はい 」


皆で"サモハン"に御礼を言い

彼は昨日、
酷い目に合ったばかりとは思えない
優しい笑顔で
「 No Problem. Good Stay! 」と
軽くクラクションを鳴らし走り去った



赤い看板の下には
紅い生肉が大量にぶら下がり
黄色い建て置き看板の横では
デカイ蒸し器から、大量の蒸気が沸き立つ


そんな路地の一本に
ジョンが体を滑り込ませると
壁から剥き出しの階段を、勢いよく昇った