いばら姫





" ペンチか何か、買って来て切ろうか "

そう思っていた矢先
目の前に差し出されたのは携帯



―― 青山は
自分のダウンジャケットを脱いで
フェンスから少し離れる

そして手にはめたのは、革の手袋



「…… お前まさか!! 」


強い視線の先は
細く鋭利な針を幾つも生やしたバラ線


――― 下から
脱いだそれを軽く放ると、

少し位置は斜めになったが
空で拡がった黒い胴体部分は巻き付いて
光る針の存在をしっかりと覆った




青山は助走をつけて
金網に足を掛ける

――― 体が浮いて
左足がダウンジャケットを踏み


次に見た時にその背中は、
軋む音をたてる金網の向こうだった



「…―― 見てくる 」


「   青山!!  」




俺もすぐに後を追おうと
金網に指と足を掛けた


……… けれど
後ろから誰かに引き剥がされ
とても簡単に、
地面に降ろされてしまった


驚きながらも抵抗しようと腕をあげると
すぐにそれも押さえ付けられて

蹴りを入れようと体を捻る頭の上から、
口元を手で被われてしまった




「…オカダ!!
暴れナイで!!…ボクだよ!! 」


冷や汗をかきながら振り向いたそこには
真ん丸な黒い目と
心配そうにあがる、太い眉





「…… ジョンさん… 」


「― 向こうに居た、ベンチの寝てるヒト
ボクらのナカマだヨ!
オカダ達が、
何か見付けたみたいだって、連絡くれた

… この中に何かあるの? 」


「い… 今、青山が中に入って 」



俺の声を聞きながら、
ジョンの目がダウンジャケットを捉え
すぐに事態を把握した様だった



「 …わかったヨ 」




ジョンは腰からピンを取り出す

そして
何回か南京錠の鍵穴を弄ると

―― 微かな音をたてながら
いとも簡単に外れてしまった



「 …オカダ、行こう 」




俺はア然としながらも
フェンスの中へ、急いで足を踏み入れた