いばら姫






険しさを増した空気
何処かへ足早に向かう背に問う


「 どこに行くんだ?! 」


「―― これが落ちていた所だ

この公園の上に、大きな貯水池がある
その近くで拾ったと教えてくれた 」


「……貯水池?! 」


―― 寒気がして、足を止める


公園の治安は善くなって
近年では犯罪率も
だいぶ低くなったと聞く

だがそれでも
年間百件位は事件が起こっていて
…数日に一度はこの木々の中で
何か起きていると言う事だ


「… アズ 泳げるのか 」


「―― 十メートル位な
真木が今年の夏 泳げる様にさせた」


「………… 」


殆ど泳げ無いって事か



「― あずる達の車が走った後
鞄か、ポケットから落としたのか
ビーズと桜貝が零れ落ちてて

だから…
俺はずっと、これも捜してた 」





――― ジョギングをしている人達と
擦れ違いながら
貯水池のある、公園の一番隅

ボート乗り場や噴水のある中央に比べると
かなり木々が鬱蒼としていて寂しい

ベンチではこの陽気の中、
倒れ込む様に寝ている人が増え
園内では禁止されている筈の、
アルコールの匂いが漂っている


―― 貯水池のすぐ横に
立入禁止のプレートが引っ掛かった
金網フェンスがあった


雑木林の奥を覗くと
プレハブ小屋の様な
半分壊れかけの建物が見える

しかしフェンスにある扉には、
南京錠が掛かっていて
ガシャリと押し引きしてみたが
開く気配は無い




――上から登れないか



考える事は同じで
二人同時に上を見あげたが

螺旋状にバラ線が巻かれていて
…昇ったら恐ろしい事になりそうだ




「―― 頼む 」



「…… ? 」