いばら姫





「オカダサン!よかった!
アナタに何かあったら私、
アズルに申し訳が立たないよ!」


「サモハン!――灰谷は?!」


「着いてるよ!
ただ、用意があるとかで
香辛料、トウガラシとか…
"コレ"ね 」

サモハンが笑いながら、
水鉄砲の真似をする


「あ、ハイタニサン来たよ!」



ブーツの音で気が付く

ライダースを着た影
左手にはマーケットと書かれた
ビニール袋


「―… お前
用意があるって言ってたの
全部あの水鉄砲
仕込む為のような気がして来た…」

灰谷は頭に包帯を巻いたまま笑って
一個俺に手渡す


青山も笑って、
差し出されたそれを受け取った



しかし、灰谷の包帯は
夜目にも目立つ

「灰谷、もうそれ、
外した方が良いんじゃないか?」


「…外れてる? 」


「違う それ、小道具なら
もう必要ないだろう?」


「…これは小道具じゃ無いよ 」

「――… は?! 」

『…流石に十メートルの足場から落ちて
無傷じゃいられないよ

…死ぬかと思ったって言ったじゃん 』


「な…! お前それなのに来たのか!! 」



『…悠長な事言ってんなよ

いい加減貴方も気が付くかと思ってたけど
まだ気付かないんだね 』


「…… 気付かない…って 」



灰谷は少しイラ付いた感じで
鋭い目を、俺に一瞬向ける



――― ザラリと音がして

いつの間にか周囲を男達が取り囲み

ヤンキースキャップが石畳に落ちた




「…… サモハン? 」


サモハンは一瞬ニヤリとして
途端に周囲の一人に腕を巻き挙げられ
建物の奥へと連れ込まれて行く







「な…どう…して 」


『… 空港で
あの人"アズル"って言ったじゃん

確かにマニアの中には
知ってる奴は居るけど
公式には明かして無いし

―― 何で知ってるのか不思議だった

…岡田さんだってアズに会うまで、
本名知らなかったでしょ』