路地を曲がると
香辛料と、肉を煮ている匂い
薄茶けた建物が立ち並ぶ中に突然現れた
オランダにある様な長窓の赤い壁
かなり古い家だ
葉の落ちた街路樹が並ぶ道を
また横道に入ると
アパートメントに囲まれた
石畳の広場になった
手漕ぎ式の井戸と、
それを排水する溝が、一本走っている
この寒い中、
野菜を洗っている恰幅の良い女の人
その横で笑い合いながら
床にビニールをひいて、
まな板と、菜切り包丁みたいな
四角く幅の広い刃先で
ダンダンと音を立てながら、
肉を切っている人も居る
――― そして小さな、クリスマスツリー
今までの道とは違い、
家の窓からの淡い光が
幾つもの照明変わりとなって
視界へいっぺんに明るさが戻って来た
白いランプを点滅させているツリーからの
黒く太いコードを追うように
建物の一角を目指して
ジョンは二人に挨拶しながら歩いて行く
――― そこは古い煉瓦のアパートメント
五階建ての壁面には
上へ向かって階ごとに
Zの形に黒い鉄の階段が走っていて
各階のベランダを繋げている
この構造のアパートは、
ここに来る迄に幾つもあった
ジョンが手で押した両開きのドアには
緑の葉で出来たリースと赤い林檎
中に入ると、電気は消えていて
白い柱が二階を支える、
アーチを潜る階段が左奥に見えた
所々盛り上がったタイルの床を歩いて
一階一番端の、
塗装が禿げた扉をノックすると
暫くして、キイ、と隙間が開く


