碁盤の目の街と言えば
サッポロとか京都を思い出す
けれどこの街は
たった一、二本、道を違えただけで、
丸っきり表情を変えるのだ ―――
かなり呆然としている俺を乗せて
オレンジの車は速度を緩め、
ゆっくりと道を進む
煉瓦作りのアパート群や
もうCLOSEの札を下げて眠る雑貨屋
SoulFoodとメニューが下がっている
緑色のレストランの壁には
スプレーで落書きがされていて
日本のそれとは違い、
街の風景と違和感がなかった
所々途切れて消えたネオン看板に
明かりがついているのは
居酒屋に近いだろう酒場
見ると、その向かいにはまた古い教会
その向かいには、
細長い地下への入口と
黒字に赤と黄色の看板が光っていて、
立て掛けられた黒い看板に
チョークで名前らしき物が色々書かれ
壁にはサックスを吹く、
ミュージシャンのカラーポスターや
重ね貼りされた白い紙
おそらくライヴハウスなんだと思う――
その前の道に樽を出して、
白い息を吐きながら
カードゲームをしているらしいグループ
―――― ここに来て初めて
タバコを吸っている人間の光景を見た
…途端に自分も
随分長い時間、ライターに
火を着けていなかった事に気が付いて
ちょっと苦しくなる
タバコを吸う事を忘れていたし
ライターは飛行機に持ち込み禁止だから
出掛けにリュックに突っ込んだ、
封の開けていない一箱があるだけだ
―― 闇の中
吐く息と混じった白い煙と
笑う歯が浮かび上がる
久しぶりに嗅ぐ、
ニコチンとタールの匂いのその前で
マイクはオレンジ色の車を停めた
「 Posse!!」
マイクが開いた窓から、
そう誰かに呼び掛ける


