いばら姫




「… 鍵、かけるか 」


吉田さんはノソノソと扉に向かい

ガチャリとロックした後
椅子を二つ引き、アルミ棚の奥の暗闇へと誘った




「…さあ
どこから話そうかな…

――― 早河のあの態度からかな
あれはねえ…

一年位前に
思い切りフラれてるんだな 」




「…… え

だっ…て  え
早河さんて… もう三十五歳とか…」


「…三十九歳
あの子の引力は、歳関係ないでしょ?

――― 芸能プロダクションで
マネージャーやってたんだよ

早河、新人さん育てるの得意でさ


松田プロデューサーって、
かなり有名な人が居てね
その人に頭下げられて、
『Azurite』の傍に就いたのは
良かったんだけど… 」



「…… フラれて…辞めたんですか 」




「ん〜……
これ話さないと、先に進まないか

あのね
手、出そうとしたんだって 」



「… え ……」


「…まあ
手え出すっつっても
熱出して寝てる所を、楽屋で看病してて…

手を握って、抱きしめて
結婚してくれって言いまくってる所を
部屋に入った人に見咎められて…


魔がさしちゃったんだろうな
本人もあまりその時の事、
覚えて無いみたいで…

周りも、『Azurite』本人も、
本当に信頼してたみたいだから
まあ、裏切り行為だよね


…… もちろん表ざたになってたら
早河は業界追放

もう近寄らないって条件で、
内々に済ませて貰ったけど


…実は早河だけじゃないんだよ

『Azurite』の周りでは
デビュー以来そういう事に事欠かなかった



似た理由で、もう五人位
マネージャー変わってるんじゃないか?

…デビューして一年目の年明け頃は
メイクの女の子が、
衣装を全てズタズタにしたりね 」