いばら姫




気が付くと
会社付近の、見覚えある景色になって居て


小さな公園前で、俺を降ろしてくれた


「ありがとうございました 」



「いえいえ

――― もうこれで、
会う事ないかもしれないけど

…バイク屋に、
"水谷タカオ"からの紹介って
言って貰えれば
比較的、何でもしてもらえると思うから 」



――― そう笑って、タカオさんは走り去り




…… 手を振りながら

何処かで聞いた名前だなとか

"助かる"と言ったのに
"もう会わないと思うけど"という台詞

―― ビデオを撮りに行くと言ったのは
社交辞令じゃなかったけど

東京の人には
そう受け取られてしまったのだろうなとか




「―― あああ!!岡田来たーー!!!」


「 え 」


会社の前には、白い、ボロのバン
実働部隊の車が、
エンジンをかけたまま停まっている

運転席の山口さんが、
タバコをくわえたまま
すごい形相で、俺を呼んでいた



「おはようございます
―― どうしたんですか? 」


「二人、おたふくになって休みになった
お前急いでチェックだけして来い!
ロケ行くぞ!
吉田さんも向こうに向かってる」



「――――― はい!! 」






事務所に駆け込み
チェックをして、
ボードに、ロケを意味する緑のマグネットを貼って
再び外へと飛び出した

後ろ半分は機材に埋まった車内


「岡田! 初か!!外!!」


「―― はい!」


髭ヅラの林田さんや、
いつもガムを噛んでいる三宅さん
その二人に背中を叩かれながら、助手席でシートベルトを閉める




―――― 俺は
その『初ロケ』の嬉しさに頭がいっぱいで



… "水谷"さんの事はおろか

サイトでの奇妙な一連の出来事も
頭の中から、
もうすっかり消えてしまっていたんだ ―――