いばら姫





集合の郵便受けを過ぎて、
段数の少ない階段を上がる

扉を開くと、沢山の人間の
明るい声がした


足元には、履き古されたスニーカーやら
最近出たばかりのブーツ
コンバース等の靴が、山の様に並んでいる


「 友達来てるのか 」


「だって、せっかくのマグロだし
冷凍して解凍してって食べるよりも
生のうちに一気に食べようと思って 」


「まあね
…やっぱりイカとかよ
こっちで食ったけど、一口でやめた 」


「 わかるわかる ただいま! 」



変わった形のメガネや
個性的な服を着た、個性的な集団

視線が集中し
男女のガヤガヤとしていた声が一気に静まった


――― 知らない奴が来て、引いたのかな


そう思っていたら
皆が声をあげて、近くに寄って来る


「…うっわ! カッコイイの来るって
ミチル言ってたけどマジじゃん!」


「でっしょー?! 」


「な… 何でそういう紹介の仕方すんのよ 」


「だって〜 」


『デザイン科の〜です!』とか
『メイクやってる〜っす!』など
ひとしきり握手を繰り返して
デカイ画面のテレビの前
もうかなり空いている
倒れたビール缶が並ぶテーブル前に座った


ちょっと小声でミチルに聞いてみる

「…こんな騒いで大丈夫なのか? 」

「ここ防音なのよ
服飾の人なんだけど、楽器やってたから 」


「 なるほど

ちょっとPC貸して貰えるか 」


「いいわよ
こっちに持って来なかったの?」


「あるけど、
絵描いたりするのに使うだけで
サイトとか見られない
頼むのとか設定とか、
弟にやって貰ってたしあまりよくわからん」


「あら
最近は電話会社が、繋ぐ時
遠隔操作してやってくれるわよ? 」


「…マジか 」


「うん 私もそれでやって貰った」


ベランダ横の机には
ミチルが自分で描いたらしい
ネイルのデザインの、紙の束


「…綺麗だな この水色の 」


「ふふー 自信作! 」


ミチルが嬉しそうに、親指を出して笑う