階段を降りて
受付にIDカードを返す
事務所の周りは、隣に喫茶店とコンビニ
目の前には公園があって
その向こうにはマンションや団地
水槽のポンプを設計している会社や
ちょっと変わった職種の入った
古めの建物が続いていて
駅前にはアーケードになった商店街があって
そこを抜けると高園寺の駅前に着く
一本向こうの通りに行くと
やはり商店街があって
古着屋が沢山列んでいるのだが
今日は覗く気になれなかった
ポケットからICカード
改札を通る
電車がちょうど来ていて
歩みを止めずに、それに乗った
―― 頭の中で、
何か考えているのか
何も考えていないのか、判らない状態
電車は線路横の民家や低いビルを抜けて
冬特有の灰色の空の下に、新宿の高層ビル群
ドアが開いて、降りる人の塊
その一部になる
――― 改札から出ると
デパートのショーウインドーは赤や緑
クリスマスはまだ先だと言うのに
気の早いツリーが、
体に星を飾り立て始めていた
高架線の下を潜り
西口から出て、20分位歩くと自宅
東京に出ると決まった時
本当は仕事場に近い
高園寺に借りようとしていたのだが
インドに数カ月、旅行に行くと言う
ミチルが通う学校の男友達
その人が留守をしている間だけ
ここに住ませて貰える事になった
やはり東京と言うべきか
家賃は引き落としだし、
大家と毎日、顔を合わせる事も無い
それに
その話を受けたもうひとつの理由は
…少し怖かったのだ
――― 例え好きな仕事だとしても
職場で他人と上手く行かなくて
辞めてしまった"前科"が、自分にはある


