――― リアルのアズに キスした瞬間
俺にかかっていた此処での魔法は
解けてしまったのか
俺が見たものは
現実の約束を目指して
強い瞳で走って行く『Azurite』と
それに対して、
何も出来ない俺っていう現実
―― だけど
仲間との約束の為に走っているお前は
やっぱりここでのお前と変わらないし
好きになった事は間違いじゃなかったと
それは本当に、思う
――― それからも
あまり代わり映えしない日々が続いて
七月も半ばを過ぎた頃
俺の軽はずみな発言から事件が起こった
アズは忙しいのか、メールでの反応が悪い
……冗談で
『遅い。…なにやってんの?』と打ったら
一切反応が返って来なくなってしまった
電話にももちろん出ないし
留守電に『冗談だろ』と入れても
何のアクションも返って来ない
…『遅い』なんて言葉は
ゲームの中でも沢山言ってた
――― 焦りの中
久し振りに掛かって来た
西からの電話を受け、
立ったついでに雨戸を開けた
用件は、
今でもたまにメールを寄越して来る
アキの知人の勤め先の番号
――― 切った後
何となく押した、通話履歴
自分が送っていたメールの量が
おかしい事に気付いて愕然とする
…時間も、
相手の都合なんて考えていない
▽ボタンをずっと押し続けても
"アズ""アズ"アズ"………
「 …… これじゃストーカーだろ ……」
自分で気が付かないうちに
人はこういう風になって行くんだと
本気で、寒くなった―――


