いばら姫






―――――― 景色…って


夕暮れの空と…
公園を囲む森と、その周りのビルしか



後は……

まだ明かりの消えたステージ
ステージ横の、黒い足場

風に靡く、
『夏の陣』と大きく書かれた横断幕

俺のすぐ後ろにある
巨大なスポットライト




……… ヘッドマイクを耳に
忙しく走り回るスタッフ

それに気付く事も無く、
夢中でパンフレットを開き
少し興奮している観客


だけど両者の気持ちは全て、
ステージの上で歌うアーティストの物――






「  … 全部見えるんです ここ

ライヴハウスなんかだと
前に行けても、
ここらに居る人なんかも居て…


電話で勝手に決められちゃうから
この席は偶然なんでしょうけど」




「…… 送られて来たんです 一枚だけ 」


「 え  誰からですか? 」


「…わかりません 」




俺はそう言って

この席のチケットが送られて来た封筒を
ジーンズのポケットから取り出し、渡す




小型のライトを着けて
遺留品の様に観察していたハシバは
すぐに顔を明るくして
俺に笑いかけて来た



「……… ああ! これ

多分、真木さん
真木空哉さんの 字ですよ
心配、全然ないです!  」