いばら姫




ドアが開く

そっとパンフレットを
元の位置に戻した


「独りにしてごめんなさいね
なんか引き出物に
シフォンケーキがあった
ナイフ借りて来たから一緒に食べよう 」


梅川医師は鼻唄を歌いながら
紙袋の一つを開いた

中からは
銀のアラザンがちりばめられた
手作り風のケーキ


「フォークないから箸でいいよね 」と


蓋の方に半分
自分の方に置いて
紙のレースに置かれた半分を
俺の方に置いた

ケーキを出す時に一緒に出された
二人の写真付きの皿


「…幸せそうですね 」

「ねえ? でもさ
お皿にするって、どうかと思うよね
使えないじゃん 」


その言い方が可笑しくて
少し笑った


「僕は親戚の中では
はぐれものだったから
結婚式呼ばれるなんて久しぶりで
ドキドキしちゃったよ 」


「…医者なのに、はぐれもの…? 」

「うん
所謂、医者一族でさ
僕も大病院に勤めてたりしたんだけど
派閥に入らないと、研究した新薬の認可が
なかなか下りなかったり…

こんなんなら辞めてやるー!って
追放に近い形で追い出されて

……一時期は、
闇医者みたいのもしてた」



「…でも…それがどうやって 」


「ん?ものすごーく簡単だよ

老人達は 魔法に縋ったの 」



「――  魔法 …? 」



「…僕なんかはこの歳でも、
あの世界では若輩者だからさ

そんな奴が
二十年そこら研究した薬なんて
信用ならないわけ
マガイモノ、魔法と一緒」



……… 二十年


「―― だけど
そんなマガイモノを
完全拒否していた人達も歳をとって

僕の"魔法"が必要な"悪い魔法"に
次々かかってしまったんだ


…今の所
データにハッキリとした効果が出てるのは
その僕の薬だけ

……彼らはお金があるからね 」




「…そんなの
診てやる必要あるんですか 」