いばら姫






一人部屋

それでも東京のそれより
だいぶ広い間取り
窓からの景色は繁華街で、
大差は無かったけれど



「……なんか、岡田君

だいぶ雰囲気変わったね…?」



「―― 髪、伸びましたから 」



テーブルに差し出されたお茶から
ゆっくりと湯気が立つ

備え付けのTバックと言えど
人に入れて貰ったのは
久しぶりだ



「そうそう!
あずるちゃんから、
チケット届いたかい?」


「あ…はい 」


―――― ずっと財布の中に入れてある


「出掛けにポストに入ってて
まだよく見てないんだけど
どんな感じのコンサートなの?」


そう言って鞄から取り出したのは
―― 定形サイズの書類封筒で
その中からパンフレットを出し
机の上に置いた



「あ 僕ちょっとフロント行って来るね」


梅川医師は
俺の目の前に灰皿
テレビのスイッチを入れて
部屋の外へと出て行った



―――― 何かドラマがやってる

どうも彼女と喧嘩した主人公が
楽しかった想い出を回想しながら
海辺でサクラガイを
ハンカチいっぱい集めようと
奮闘しているらしい


ボリュームを少し上げようとして
リモコンに目を向けた



その下にはパンフレット

ノート位の大きさ
赤と黒のコントラストと
金の文字で『夏の陣』


…俺にはチケット一枚だったし
中を見ようと思って
手に取った



間から、
スルリと紙が落ちて来て慌てて拾う


チケット
だけど 俺のとは、色が違う―――


梅川医師のそれには
座席番号は書いておらず
ただ "P−seat" とあった



―― 関係者席…?