いばら姫








歩みを緩めた、駅の横

デパートの入口が明るくて
目を、ふと 向けた


夏は祭が多いから
観光客目当ての
物産コーナーがあるらしく

波飛沫に紅白文字で
『うまいもの展』との旗が
大きく掛かっている




―――――― 入口から

両手に大きな紙袋を持った
中年男性

普段着の主婦や
サラリーマンの群集の中で目立つ
冠婚スーツにメガネ


一度、袋を地面に置いて
内ポケットから取り出した
小さな紙を見ながら
キョロキョロ辺りを見渡している



そして 俺と目が合った



" あれ?! "と
驚きながら走って来たのは

あの『梅川クリニック』の医師で


お互いお辞儀をしながら
突然の再会に
暫く驚いて、口を大きく開けていた