いばら姫







―――― 静かに
少し戸惑いがちに
ドアを叩いた



「………だぁれー…? 」



中から高慢そうな
――少し怠そうな声が帰って来る


「…すみません!
隣の部屋、泊まってるものです

いきなり
部屋の鍵さ 閉まってしまって!
どうしていいか、わからなくって!」






―――― カチャリと
扉が開いて

きつく描いた、上がった片眉と
濃い赤色の
ヘの字の唇が覗いた


……バスローブと
長い髪をタオルで巻いているが
メイクは落とさず
かなり気合いを入れている

年齢はよく知らないが
主婦層女性のファッション雑誌の表紙で
たまに顔を見かける

かなりの迫力美人
ただ性格は、かなりキツそうだ



あさっての方向を見て
面倒臭そうに頭をガリガリ掻いていたが

「…オートロックだからね

フロントに電…」

――― 俺の顔を見て

上から下まで眺め廻すと
紅い唇が形良く、ニッと笑った


「…はいんなさいよ
待ち人が遅くてね
イライラしてたとこ…」




「…す、すいません…
フロントに電話させてもらったら
すぐに

――――帰りますので。」



俺のすぐ後ろから入って来た灰谷が
カチャリとドアを
ロックした



―――― 女は一瞬だけ
顔を強張らせていたけど

タオルを外した髪を
忙しく拡げながら
つまらなさそうに、ソファに座った


あの丸いライトの下には
濃くて癖のある
甘い匂いの長いシガレット

火を最大にしたライターで
大袈裟に吐いた煙の中

魔女の様な顔付きで
足を組んで笑った