"CheaーRuu" 灰谷 遠矢さま
通された部屋には
そう書かれた白い紙が
ドアの所に一枚
灰谷は、そこを開いて
名前入りの
花の沢山飾られた控室に入って来た
『…お待たせ岡田さん
これ、首にかけて』
"CheaーRuu・TOUR STAFF"と書かれた
黒と金の、スタッフカード
『ここで待ってくれててもいいし
客席、Standingだから
見ながら待ってくれていても
構わない
―― これ、俺の携帯番号』
明るい化粧台の上から
マジックとメモ用紙を持って来て
サラサラと番号を書く
それを置くとゴツゴツと音をたてて
灰谷は、ドアを閉めた
――― 部屋に灰皿は無く
扉を出て、細い廊下
携帯を見ることも無く
壁には丸型の時計
時刻は五時半
右側の控室の列びには
"CheaーRuu"メンバーの名前が
貼られていて
―――青山の物もあった
左には少し迫り出した
天井から床まで、
硝子の伸びる窓の元にある
テーブルと椅子
景色は夕暮れの森と
点滅しだした、ビルてっぺんの
赤い粒
夕日が、
椅子の脚の黒い影を
廊下に長く延ばしている
―――灰皿には
今さっきまで、誰か居たのか
俺と同じ銘柄のタバコのフィルターと
横にはショート缶の、珈琲が一本
タバコは殆ど吸われなかったのか
灰の形だけ残っていた


