いばら姫






「……うん……嬉しかっ……」




「……実際
俺が青山さんと同じ立場になったらとか
考えてみたけど…


…やっぱり
考えたくないな」




俺も多分、
普通じゃなくなると思う

――― 俺のアホみたいな
勘違いじゃ無い


けど余所から見れば
出来の悪い喜劇とは言え
一年間、あれは俺の中では真実だったし



多分、実際会った事がなかった事と

アズの現実味のない雰囲気とか
――体が悪い様子も伝わっていたから

心の何処かで

こんな最低な事はないけど

何か延長上の物語を見るみたいに
そんな"if'を
……予測していたのかもしれない



だけどあの人は
全ての出会いがリアルで

――― 現場に居て
全てを見てしまった





そしてアズに実際会って
解った事がある

言葉が無くても、"触れる"だけで
伝わる事が、沢山あるって事を




―――自分で泣き止んだアズの手を引き
冬薔薇の下の、明るいベンチに座らせる


昼近くになり公園内には、
俺達と同じ様な二人組が増えて来た


――まだ俺達は
『恋人同士』では
無いけれど――――




すぐ後ろに、自販があり
ゲーセンで
アズが買っていたお茶を選び、渡す




コートの袖越しに
熱い缶を握り
長い睫毛をふせて
アズはジッと、考え込んでいた




「……アホだなあ
色々なドラマとか見てみろよ
ヒロインがフラフラしてる方が
視聴率あるのに…」


「…へんな例え 」


「でも実際そうでしょ?

――― それとアズ

俺が映画なんたら言ってたけど
…気にする事ないから」


「……なんで? 」




「…明かしてしまうとさ

今年の春に、俺

ショートフィルムコンテストってのに
一本送って、見事落ちてる

第一選考も通らなかったよ


何年も苦労して、送ってる人がいる中で
機材一式揃えて、何となく送って…
かなり失礼な話だけどね

だから俺の実力はそれ

――――もういいんだよ 」