「"あるよ"っつってたぞ」
「やったー!!」
………やたらはしゃいでる
こいつの場合
緊張してる証拠だな
壁一面のガラス窓には
かなり良いロケーションの夜景
アズがしきりに
こめかみの辺りを気にしている
「…そういやお前 ウィッグか
帽子も取って、もう外しちまえよ」
「 うん 目も少し 痛い」
コートのポケットから
コンタクトケース
はー と
息をひとしきり吐いて
アズはウィッグも外す
――両耳に、青い石のピアス
肩までの
少しウェーブした
白に近い金髪が現れて
俺の胸の先に、拡がった
「ほっ…そいなあ 髪
解かしてやるから待ってな」
俺は一旦
タバコを灰皿に置いて
洗面台から
使い捨てのコームを持って来た
その間にアズは
―――チェックのロングコートを
脱いでいて
「…いい傾向。 」と
少しニヤリとする
「…え?」
「……うどん、
七味も頼んでおいたから」
「うん ありがとう」
コットン生地の
厚めのキャミ
黒に銀のローズプリント
ジップスカートは…古着かな
俺の脚の間
後ろ向きに座らせる
無音の部屋に
髪を梳く音――――
「…アズ 」
振り向いたそこには 碧い瞳
重ねた息の先で
アズの抵抗が収まるのを待つ
―――無理強いはしない
そんな事しなくても
女は落ちるし
…アズにしてみたら
ここまで来るのは決死の覚悟だろう
――自分の中の、
唯一を捨てるんだから――
背中から抱きしめて、首筋
―――耳
……最後に一回だけ
少し意地悪な、助け船を出した
「……『私、やっぱり帰る』って
言ってもいいよ」
「…………うどん、
まだ食べてないもん」
「うどんかよ! 」
思わず吹き出して
――やっぱり帰したくない
そう思った


