いばら姫





カメラを監督自ら肩に取り

檀上で挨拶する校長の話を聞く
生徒の中へ
カメラを滑り込ませる


最初に"オッサン"の存在に
気が付いたのは
柔らかい雰囲気の"ミサキ"

後ろの席に座る"ニチカ"に
それを報告すると
"ニチカ"はムッとした顔で
立ち上がり、そこでカット


『茜ちゃん
あ〜あ って感じじゃなくて
瞬発的に反応って感じで』

「 はい 」



三回目にOKが出て
次には

移動式のレールカメラで
"オッサン"の所まで、
"ニチカ"がツカツカと走って行くシーン


"ニチカ"と一緒に
カメラも平走する


数回繰り返し、やっとOKが出ると
次にはクレーンカメラでの
"ニチカがオッサンに飛び掛かり
イチルが慌てて
それを止めるシーン"


そして不思議だったのは
俺達エキストラには
"それが何も起きていない様に振る舞う事"



"不審なオッサン"に
父兄席をぐちゃぐちゃにしながら
飛び掛かった"ニチカ"



「ニチカ!
ニチカやめてよ!!」

「だってこのオッサン!!」


「ち、違うんです……!!
わ、私はアヤシイ者じゃないです…!
そ、そこの子が、娘に良く似ていて…」


「何その下手くそな言い訳。」

「……わ、私
もうすぐ死んじゃうんです!!

む、娘はまだ小学生で…
高校の入学式、
見られないなあと思ったら…」


―――― その台詞を言った途端
乱闘で飛び散った
ピンク色の入学式のパンフレットが
降りしきる中

口を開け
慌てたままの表情から突然
大量の涙


それを見て"ニチカ"は
…多分、久保さんの演技に
本気で動きが止まったんだろう

殴るのをやめ
ひっくり返されて解剖されそうな
"朝丘"を見つめる


『―――…はい!!
一発OKです!!!
皆さん素晴らしいです!!』


久保さんは
その合図と同時に、ニコッと笑い
スタッフの人が手を取り
床から立ち上がった


体育館中から
大きな拍手―――――


久保さんは、照れて頭を掻きながら
タオルで顔と、首を拭いた