いばら姫



『お題がひとつあって
それは"絵を撮る人が主人公"

僕が今回その
主人公をお願いしたのは
久保ハジメさんです』


久保ハジメは拍手の中
そう声が掛かると、立ち上がり
はにかんだ様な笑顔で
お辞儀をした

彼にスタッフから
マイクが渡される


『えー… 久保です
数年振りに、いやー
デビュー以来初めてかもしれません
"普通のマトモな写真家"の役を
頂きまして…』


体育館中が、その台詞に笑った


『少しネタバレしても
良いと言う事だったんで…
えーと…
私が演じている"朝丘"は
ゴシップネタを撮るのが苦手な
ゴシップカメラマン

パパラッチと言う奴ですね

…妻にはだいぶ前に離婚されていて
小学生の娘とも、数年会ってません


―― だけど
侘しいなりにも、平凡な日々の中
"朝丘"は、
自分の死期が近い事を知ります

最後に娘の顔が見たい――

カメラを胸に抱えて
電車に乗るのですが
そこで三人の、不思議な女子高生に
出会うんです

て事で、"女子高生・イチル役"の
坂本茜さん どうぞ』


その声で席を立ったのは
前三列のレール脇に居た
さっき髪の毛を整えられていた
少し気の強そうな少女

『よろしくお願いします』と
短く挨拶し

"女子高生・ニチカ"
"女子高生・ミサキ"にマイクが廻って行った


再び監督にマイクは帰り
これから撮る場面の説明


『ここでは"入学式"と

舞台での
"三年生、一年生を迎える合唱シーン"

イチルが
"電車の中で会った
いきなり写真を撮ろうとした
オッサン"を父兄席で発見し
席から立ち上がり、
もみ合いになる場面を撮ります

舞台でのシーンは
午後の窓からの光が、
ど〜しても欲しいので

お昼過ぎ、
あ お弁当も出ますので

お昼過ぎから撮って
3時位からエキストラの方には
新宿に移動して頂いて

スクランブル交差点を
一気に走り抜けて行くシーンを撮り
終了となります』


説明と一緒に
簡単なスケジュールのプリントと
『入学式』と書かれた
ピンク色の紙まで配られた