何台か
大型の電気ストーブがあって
俺達が指示された場所にも
ひとつ、それがあり
腰を開いて、
それにあたりながら
前の席の人間と談笑している男は
フィルム世界でよく顔を見る
個性派、脇役俳優の久保ハジメだった
髪の毛が薄く
オタク気質なサラリーマンや
気の弱い店主とか
ロリコン親父とか
―― 本物は、しっかりとした
普通の中年男性で
やはりちょっと、オーラが違う
座っているだけで、目をひいた
学生達が座る中でも
興味ある動き―――
どうも前三列位までは
この映画に
オーディションで受かった子らしく
その中でもマネージャーがついている者
いない者があって
ついている者には、かいがいしく
髪の毛を整えて貰ったり
着ていたコートを預けたり
そんな場面
こんな空間の中でも
差があって―――
俺達お気楽なエキストラとは違い
そこに少し張り詰めた空気があるのは
そんな理由なんだろう
――そんな中
ざわめきが起こった
自然発生的に、拍手が生まれる
後ろの保護者席の横の入口から
『監督・池上海平』が
入って来たからだ
アズは拍手しつつ
ポケットからダテ眼鏡を取り出して
急いで掛け始めた
アズの耳元に口を近づけて
聞いてみる
「…お前もしかして
エキストラで参加する事
話してないのか?」
「 うん
バスにいたお姉さんが
知り合いだから、頼んだ
カイヘーに話して
入れて貰ったんじゃないよ」
――でも俺の面が割れてる
向こうが、覚えてればだけど
バレても構わないけどね
『え〜っと
皆さん、おはようございます!』
体育館中が
同じく『おはようございます』と
挨拶を返す
『寒い中、ご足労おかけします
この映画は来春、
若手監督六人のオムニバスって感じで
公開されます』


