いばら姫




威嚇された訳でも
脅された訳でもなく

タトゥーと丸眼鏡の
挨拶と名刺攻勢


「いや!!ホントに僕らは
アヤシイ者では無くてですね!
あ!わたくし、
新宿駅前ジーンズショップKで
店長をやっております
緑川と申しまして…!」

「"あなたの元気!"で
お馴染みの、丸元運送!
新宿支部長、赤池 亀吉です!
お引越、
レンタルボックスご利用の際には
是非ともお電話下さい!」


――― その勢いに
毒気を抜かれたみたいになって
どう反応していいのか
思考がフリーズする

「池上くんも!!
ほら!名刺名刺!!」


振り返ると
いつの間にか、坊主頭のランニングが居て
その声に慌てて、腰の財布を取り出した


三枚の名刺を受け取り
…俺も渡さない訳にも行かず
まるで会社同士の顔見せみたいに
俺も財布を取り出した


「阿尾森!!
俺は真逆の九州なんですよ」

…… 話を逸らされている気がする


「あの、俺は!」

「…岡田さん 」


"赤池"は
少し頬を掻いて、人の良い笑い顔で
俺の顔を見る


「―― 貴方はアズちゃんの
彼氏さん、ですか?

…だとしたら話は知ってると思うし
色々思う所もあるでしょうけど

―― 青山は、
…僕らのバンドのベーシストは
そんなに悪い奴じゃありません

一日だけでいいんです
アズちゃんと、青山
皆に、時間をやってもらえませんか…?」


思い切り頭を
九十度に下げられて
絶句する

"緑川"まで



「――…だけど 俺は…!」

――どう考えても
今の俺に勝ち目なんかない
どれ位奴らが一緒に居たかは知らない
だけど…逢わせたら終わりな気がする

男と女なんて、そんなもんだろう?

俺からしたら
"真木"だって危うい

何処に連れて行ったのかは知らないが
二人っきりなんだ



――― けれど"真木"は
ガラス扉を開いて
独り、再び戻って来た