「奈緒、学校遅刻するよ?」
「わっ…!」
テーブルで朝ご飯を食べている途中のあたしの横の椅子に、いきなり来て座ってた紫音。
「何よ、人を化け物扱いして」
「だって、知らない間に隣に紫音が座ってたから……」
それはびっくりするに決まってる。
まぁ、全ての支度が遅いあたしがいけないんだけどさ……。
あたしたちの家から高校までは、自転車で20分で行ける。
だから紫音と一緒に登校するときは、2人で自転車で行ってて
中学のときは自転車通学が駄目だったから、高校生になってから毎日が新鮮。
「自転車の鍵は?」
「……」
やっとご飯を食べ終えたあたしに、紫音は『早く言ってよ』とでも言いたそうな視線を送ってきた。
………自転車の鍵?
あれ?あれれ?
どこ……やったっけ?
「菜緒まだ髪の毛セットすんのに時間かかるんでしょ?」
「う、うん」
「いつも自転車の鍵ないって最後に騒ぐから、あたしが髪の毛セットしてる間に探しといてあげる」
「う、うん」
「で、結局どこにあんのか分かんないの?」
「分かんない……」
すると紫音はため息をつきながらも、本当に鍵を探し始めてくれた。
なんだかんだ言ってため息をつきながらも、どじなあたしの面倒をみてくれるのが紫音だ。



