高校生になってから1ヶ月。
まだまだ高校生活に慣れていないある日の朝。
「奈緒ー。紫音が来たわよー」
「はーい。今行くー」
いつものように紫音があたしの家まで迎えに来てくれた。
頭がいい紫音は、中学時代の先生に今あたしたちが通ってる高校を受けると言ったら、
『もっと上の高校を狙えるぞ』と残念そうに言われたと言ってた。
そのくらい今の高校のレベルが紫音には合ってないのに、紫音はこの高校をあたしのために受験してくれた。
志望校を決めなきゃいけない中学のある時期、あたしは紫音に『高校離れたくないよ』と、涙目になりながら言った。
すると、優しい紫音は笑顔で『じゃあ一緒の高校受けようよ』と言ってくれた。
その時あたしは、紫音があたしのために自分が行きたい高校を諦めたんだって思って、罪悪感でいっぱいだった。
あたしのために諦めたんだって。
あたしのために行きたくもない高校を受験してくれたんだって。
あたしのために。
あたしのために。
そんなことばかりを考えていた。
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