沙絢ちゃんは樹の銀色の髪に触れようと手を伸ばした。
触らないでっ……。
それを見て咄嗟にそう思ってしまったあたし。
だけど、沙絢ちゃんの手は樹の銀色の髪に触れる前に、樹の手によってパシッと遮られた。
……え……?
「触っていいって言ってねぇけど」
「…あ…、そ、そうだよね」
「じゃあ、俺用事あるんで行くわ」
樹は固まってしまった沙絢ちゃんの横を通って、まるで何もなかったかのように靴を履き、ドアを開け行ってしまった。
手を叩(はた)かれた沙絢ちゃんは固まって少しの間動くことなく、
あたしが『沙絢ちゃん?』と声をかけると。
「あ、あれだね。奈緒ちゃんの彼氏って不良?なんだね」
「え?」
「でも男らしくてかっこいいね。ほら、最近って草食系ばっかりじゃない?」
『アハハ…』と、少し沙絢ちゃんの様子がおかしい気がしたけど、そのあとリビングで話した時はなんの変わりもなかった。
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