『“にーさん”って、止めない?』


『なんで?』


『ん?好きだから』


あまりにあっさりとした答えだったけど。
今、思い返せば何時もより声が震えてた。

後にも先にも。

隣に立つこの人の声が、緊張で震えたのはそれっきり。


「お花見したいねぇー…」


誤魔化すように。
何となくそう言った。


「…弁当持って?」


振り向いて。
不思議そうに訊ねる。

今回は乗り気らしい。


「や、酒」


「ヤダ。おまえ酒強ぇもん」


「にーさんだって人のこと言えないじゃん」


一蹴する相手に思わず口を尖らせる。

次の瞬間。
思わず口を押さえた。