夏揆は、はぁ…と一つため息をついて、

「健の浮気」

そう一言呟くように言い捨てた。


…浮気。
彼氏も居なければ、誰かと付き合った事も無いあたしにはイマイチピンとこないワードだ。


浮気って、やっぱりちゃんと存在するんだ…。

漫画かドラマくらいしか見たこと無いから改めて実感してみたり…って、今そんな事してる場合じゃ無いか。


健くん。
何度か会った事あるけど笑った時のえくぼが可愛くて浮気するタイプには全くと言っていいほど見えなかったのに。


人って分かんないなあ。

「そっかぁ。辛かったね」


恋愛経験豊富でも何でも無いあたしにはありきたりな慰めの言葉しか思いつかなかった。


「うん。ありがと」

無理やり頬を上げた夏揆の笑顔が痛い。


「げ、元気出して!放課後どっか行こっか!カラオケ?バイキング?今日はあたしが何でも奢るよっ!」


こんな事でしか夏揆を元気付けられないあたしは出来るだけ夏揆を喜びそうな物を挙げた。